三丁目の良子さん

2024年3月3日放送分

桂木良子の映画感想
「52ヘルツのクジラたち」

久しぶりに試写会で鑑賞。映画好きが集って上演を待っている10分ほどの期待に満ちた高揚感。いいですねぇ・・・ しっかり楽しみました。

2021年本屋大賞の町田そのこさんの原作を読んで、映画化は難しいなぁ・・・と思っていましたが、虐待や性の描写などさらりと流す部分も有り、原作よりも掘り下げて描く部分もあって過不足なく、原作よりも良かったと思います。成島出監督の作品はどれも好きですが、「八日目の蝉(2012)」に続く代表作になると思います。

東京から海辺の一軒家に移り住み、虐待されて声を失い「ムシ」と呼ばれる少年と出会った貴瑚は、少年にかつての自分の姿を重ねて一緒に暮らし始める。それは自分を救い出してくれた安吾とのかけがえのない日々を想い出させるものだった・・・ 

この映画の成功は先ず俳優陣の素晴らしさ。主演の杉咲花の巧さは言うまでも無いが、安吾役の志尊淳がまた素晴らしい。彼が主役と言っても良いほどの強い印象を残します。他にも、宮沢氷魚の悪役ぶりは意外性があり、余貴美子の母親役には泣かされ、子役の桑名桃李君はふっくらした頬が、松阪桃李というより妻夫木聡の子ども時代みたいで可愛い。

舞台となるのは大分で、海を見下ろす家も港の風景も素晴らしいのですが、物語を反映していつも灰色っぽい世界。でも、実際の大分は空も海も“真っ青”です。大分在住経験者の私が保証します。

『あまりに高音で鳴くために他のクジラたちには聴こえない。だから世界で一番孤独なクジラと言われてる』という52ヘルツのクジラの声は、鳴くと言うより嗚咽しているよう。性差や格差、あらゆる差別に嗚咽する人の声が届きますように・・・ 男女関係でもなく、血縁関係でもでもない『魂の番い』と呼べる人に出会えますように・・・と願う。

 

日曜かんたんブランチ
桃の節句のひな祭りだから、「菱餅みたいなサンドイッチ」をご紹介しました。

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