三丁目の良子さん

2024年1月28日放送分

桂木良子の映画感想
「ファースト・カウ」

メジャー大手の映画会社ではなく、アメリカの独立系映画の分野で高い評価を得ているケリー・ライカート監督が、西部開拓時代のアメリカで成功を夢見る二人の男の友情を描いたヒューマンドラマ。

アメリカンドリームとは無縁の、暗くぬかるんだ森が続くオレゴン州。ビーバーを乱獲して毛皮を売る男たちに料理人として雇われているクッキーは、食料探しに出かけた森の中で、ロシア人から追われて裸で逃げてきた中国人のルーと出逢ってかくまってやる。

そんなとき、その地に1頭の雌牛がやってくる。毛皮の仲買で財を成した英国人が、紅茶にミルクを入れたくてはるばる買い寄せた、この地でたった一頭しかいない乳牛からこっそりミルクを絞り、ドーナツを作って大儲けしようと思いつく二人。甘いものに飢えている男たちにドーナツは飛ぶように売れ、二人は夢を語り合うが・・・

無口でお人好しのクッキー(ジョン・マガロ)と、機敏なしっかり者のルー(オリオン・リー)の二人が静かな友情を育み、泥沼のような世界から抜け出そうともがく姿は、ジョン・ボイドとダスティン・ホフマンの「真夜中のカウボーイ(1969)」を思い起こさせる。

CD技術で何でも出来る商業映画の派手さを見慣れた目には、ドキュメンタリーを見るような暗くて地味な作品だが、後半の展開はスリリングで、美しい映像や軽やかな音楽に癒やされる。重要な役割を果たすカウ(牛)ちゃんは、白黒模様のホルスタイン種ほど大型ではなく、ミルクティー色の小柄な牛でぱっちりとした黒い瞳が愛らしい。

2時間のドラマが本編最初のシーンに回収されますので、一番最初のシーンをしっかり覚えていてください。

 

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