三丁目の良子さん

2023年9月17日放送分

桂木良子の映画感想
「こんにちは、母さん」

92歳の誕生日を迎えられた山田洋次監督の90作目となる作品。

東京の下町を舞台に、日本映画界の最後の大スター・吉永小百合さんを見せる為に作られた、昭和がいっぱいの映画・・・ と予測したのですが、日本映画界の最後の巨匠・山田洋次監督はまだまだ枯れていませんでした。

 

隅田川のほとり向島の老舗足袋屋の寡婦・福江(吉永)と、教会の牧師(寺尾聡)とのほのかな恋や、大企業の人事部長として、友人にクビを宣告しなければならない息子・昭夫(大泉洋)の苦悩や離婚問題、そして大学生の娘・舞(永野芽郁)との関係など、現在を生きる各々の問題もしっかり提起されています。美しい吉永小百合さんの下町口調や、老いへの不安を語るシーン、やけ酒を飲んでくだを巻くのも斬新?でした。

 

とは言えど、山田作品ならではの既視感や過去作への敬意も随所に。

最初に登場する福江さんちの茶の間は「男はつらいよ」の“とらや”の茶の間のよう。2階に続く階段を、ふてくされた舞が駆け上がるシーンでは、寅さんの足音が聞こえるようでした。

そして、集めた空き缶を山のように積んだ自転車を、脚を引きずりながら押して行くホームレス(田中泯)の名前は「イノさん」! 「学校(1993)」で田中邦衛さんが演じた、あのイノさんだ!!思わず涙がこぼれました。

 

田中泯さんの強烈な存在感は言うまでも無く、へなちょこ男のしぶとさを見せた木部役の宮藤官九郎さんも良かった。力士の明生関も登場しています。

吉永小百合だけを見せる為の映画ではなく、大泉洋ひとりが目立ち過ぎるのでもなく、ほぼ全員に見せ場と主張が用意された映画でした。

 

日曜かんたんブランチ
余った素麺で作ってみよう。「そうめんスナック」をご紹介しました。

*ラジオは参加すると楽しさ倍増! リクエストやメッセージお待ちしています!

最近の記事

ページTOPへ