三丁目の良子さん

2023年8月27日放送分

桂木良子の映画感想
「高野豆腐店の春」

平成が終わる頃の広島県尾道市を舞台に、妻に先立たれ昔ながらの豆腐屋を営む父と、離婚経験のある娘の縁談をめぐる物語。

小津安二郎監督の「秋刀魚の味(1962)」を連想し、猛暑の夏の終わりにはしみじみと静かな映画も良いよね・・・と思って鑑賞。

ところが意外にも、楽しくてしっかり笑える映画でした。

 

父親の辰雄を演じる藤竜也さんが良いですね。お若い頃もダンディなかたでしたが、素敵に年齢を重ねてこられたなぁと思います。渋いだけでなく、闊達でユーモアがあってチャーミング。そんな父を助けて豆腐屋を手伝う娘ハル役の麻生久美子さんも、生き生きとして長靴姿も可愛かった。

 

心筋症の持病を持つ辰雄が亡くなったら、ハルちゃんは独りぼっちになる!と心配して、縁談をまとめようとするご近所の仲間たちは賑やかで楽しく、時に鬱陶しいほどのお節介で、山田洋次監督の描く寅さんの下町のよう。

 

海を見下ろす坂の町・尾道は絵になる町で、辰雄と独り暮らしのふみえとの出会いも違和感なく受け入れられる。ふみえが被爆者手帳を持つ様子がさりげなく描かれたり、ハルの花婿候補が野球ファンであることは絶対条件で、巨人ファンなどはもってのほか! オリックスぐらいまではなんとか許される・・・など、広島あるあるも随所に登場。

 

辰雄の作る豆腐は、『先ずそのままで食べてみて、次に塩を少々振って食べてみて欲しい』と言う。柔らかくてほんのりと甘みがあって、豆本来の苦みも感じられるという高野豆腐店のお豆腐のように、派手さはなくてもしっかりと滋味を味わえる映画でした。

 

日曜かんたんブランチ
かけてもつけても美味しい、「おろし蕎麦つゆ」をご紹介しました。

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