2024年9月15日放送分

桂木良子の映画感想
「愛に乱暴」

ラブストーリーでもヒューマンドラマでもなく、サスペンスでもホラーでもない。でも、その全てが不穏に漂う緊迫感のある映画でした。見どころは江口のり子の迫真の演技。そして小泉孝太郎が演じる陰気でゲスな亭主ぶり。二人の演技を見るための映画といっても良いくらい。

ストーリーはシンプル。妻ある人と不倫して妊娠、奥さんを追い出して結婚した桃子が、同じことをされて離婚を迫られる･･･　いわゆる因果応報。しかも自分は流産して夫や姑に肩身が狭いのに、今度の浮気相手は若くて美人で赤ちゃんも無事に生まれそうだという。

実家には居場所はなく、講師を務めるカルチャースクールも打ち切りになり、元の職場への復帰を願うが相手にされず、姑は息子を叱りながらも、赤ちゃんの誕生を楽しみにしている･･･　どこにも居場所のない妻が、少しずつ平穏を失ってゆく姿が切なく身につまされる。

夫は妻に無関心で、話しかけても上の空。寝室では背中を向け『君といてもつまらない。楽しくないんだ』と言われたら、妻の絶望は修復不能だ。匂いフェチで、夫の電気カミソリもワイシャツもクンクン匂いを嗅ぐ桃子が、大きなチェーンソーの匂いをうっとりと嗅ぐ姿は鬼気迫り、もしや殺人事件へ突入か？と身構えるが、そんな恐ろしい事は起きません。

近所のゴミ置き場で度重なる放火事件の解決もなく、桃子がこの先どうなってゆくのかも明かされず、謎が謎のまま終わるが、江口のり子の存在感だけで桃子の未来を想像させます。

日曜かんたんブランチ
敬老の日に作ってみよう「いちじくの蒸しパン」をご紹介しました。

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