今週の「金曜日のお客様」、スタジオには、陶芸家の十一代 大樋長左衛門(おおひちょうざえもん)さんにお越しいただきました。昨年、裏千家の風習に倣い、千利休の生誕日直近の大安となる1月27日に歴史ある名を襲名され、かたや現代アートの世界でも活躍中の“二刀流”作家。今回は、幼少期から襲名に至った現在地、今後の展望についてたっぷりお話を伺いましたよ。

 親(先代)から直接言われたこともないのに、子供心に将来の継承を思い描くほど茶室が当たり前にあったという幼少期。後に拒否反応を示すことはあっても、無意識に祖先や作品とシンクロする部分を発見するなど、理屈での理解も深めていかれたそう。今の時代は「美術館もあるので原点に帰りやすい」と自己分析されます。

 かつては「文化の秘密兵器」の役割を担い、文化としての価値が深まるばかりの陶芸の世界、十一代は自身の現代アートと意図的に絡めるつもりはなく、むしろ今の時代だからこそ許される二刀流として、「二人分生きたい」と明言されます。

 他者を見落とさず、金沢を盛り上げる一助でありたい、と謙虚な十一代。落ち着いたトーンの語り口は、常に自分を客観視し、ウィットに富んだ内容に終始します。一方、展覧会を訪れる際は、最低プランで旅をするジンクスを持つなどアスリート的な一面も披露。受け継いだ歴史に劣らない、深い人間力に触れる時間となりました。

ページTOPへ