| 第8章 表現上の配慮
(43) 放送内容は、放送時間に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする。
放送はあらゆる人々の生活に密着しているので、生活時間に応じた感情や心理を考え、不快な感じを与えないよう、放送時間と放送内容との関連について十分な配慮がなされるべきである。
(44) わかりやすく適正な言葉と文字を用いるように努める。
一般視聴者が理解しにくいような言葉や文字の使用にあたっては、過不足のない選別が必要であろう。また、一部の人々の間でしか理解できない、業界用語やいわゆる隠語・楽屋落ちの類も、できるだけ避けることが望ましい。
(45) 方言を使う時は、その方言を日常使っている人々に不快な感じを与えないように注意する。
方言やなまりを揶揄(やゆ)的に、あるいは軽蔑して使用することは厳に慎まなくてはならない。ドラマなどで必要上使わなければならない時は、その方言に慣れ親しんでいる人々に不快感を与えないように注意する。
(46) 人心に動揺や不安を与えるおそれのある内容のものは慎重に取り扱う。
正確な情報を伝えることは放送の使命であるが、情報を伝える際には、視聴者の不安をあおるような表現は極力、避けるべきである。
フィクションまたは仮説として、この種の内容を取り上げる場合にも、事実と混同されないよう十分に配慮する。
(47) 社会・公共の問題で意見が対立しているものについては、できるだけ多くの角度から論じなければならない。
放送が一党一派に偏してはならないことは、法の定めるところである。
放送の持つ社会的影響力を考えて、社会・公共の問題については、賛成、反対、中立など公平な立場で多角的に論じることが必要である。
(48) 不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現は避ける。
視聴者に不快な感じを与えるような下品、卑わいな表現、公序良俗に反するような表現は避ける。
たとえ芸術性を主眼とする番組、劇映画や舞台中継等においても、放送にあたっては注意しなければならない。
(49) 心中・自殺は、古典または芸術作品であっても取り扱いを慎重にする。
人命尊重は現代社会の基本理念である。いかなる場合でも、これを否定的に扱ってはならない。
古典、芸術作品でも、心中や自殺行為を美化・礼賛するものの取り扱いは慎重にしたい。
(50) 外国作品を取り上げる時や海外取材にあたっては、時代・国情・伝統・習慣などの相違を考慮しなければならない。
外国作品を取り上げる時や、海外取材にあたっては、その国の風俗、伝統、習慣、宗教など、わが国との違いを考慮し、番組のタイトル表示などについても視聴者に誤解を与えないようにしなければならない。
特に、国情、政治情勢など誤って伝えることがないように十分、注意する必要がある。
(51) 劇的効果のためにニュース形式などを用いる場合は、事実と混同されやすい表現をしてはならない。
番組やコマーシャルで劇的効果を上げるために、ニュース形式、例えば「臨時ニュース」「緊急情報」「ニュース」「天気予報」「交通情報」あるいは「時報」「緊急車のサイレン」などを用いる場合は、事実と混同されないように配慮しなければならない。
適切な配慮を欠くと、著しく人心を動揺させることがある。特にラジオでは慎重な配慮が必要である。
また、無線電信信号を使う場合は、一般の無線信号と混同されないようにする。なお、SOSモールス信号は、1999(平成11)年2月1日にGMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)によりデジタル信号に切り替えられ、国際的な遭難通信信号としては使われなくなったが、モールス通信そのものは残っているので使用には配慮が必要である。
(52) 特定の対象に呼びかける通信・通知およびこれに類似するものは取り扱わない。ただし、人命に関わる場合その他、社会的影響のある場合は除く。
極めて限定された特定対象への呼びかけ、また、その特定対象にしか意味をなさない通信・通知などは、放送の社会性・公共性という観点から是認される場合を除いては、取り扱うべきではない。
(53) 迷信は肯定的に取り扱わない。
〔次条解説参照〕
(54) 占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。
現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する人相、手相、骨相、印相、家相、墓相、風水、運命・運勢鑑定、霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを肯定的に取り扱わない。ただし、伝説を取り上げるのはさしつかえないが、その場合、誤解のないように注意する。
(55) 病的、残虐、悲惨、虐待などの情景を表現する時は、視聴者に嫌悪感を与えないようにする。
これらの表現は視聴効果を上げるための一手段ではあろうが、嫌悪感を与える可能性が強いので、視聴者の感情を十分に配慮して取り扱う必要がある。
(56) 精神的・肉体的障害に触れる時は、同じ障害に悩む人々の感情に配慮しなければならない。
心身に障害を持つ人々、または固有の特徴を持つ人々、ならびにこれらに関する問題を取り扱う場合は、同じ障害や特徴に悩む人々およびその家族や関係者の立場を十分考慮し、その感情を害さないように注意しなければならない。
(57) 医療や薬品の知識および健康情報に関しては、いたずらに不安・焦燥・恐怖・楽観などを与えないように注意する。
健康問題は極めて社会的関心が高く、その人の置かれている状態に応じて反応は様々である。放送にあたってはこの点を十分注意し、大げさな表現になっていないか、期待や不安を煽っていないかなど、表現に配慮しなければならない。また、取り扱った健康情報などが、特定商品・サービスの広告活動とならないよう十分留意しなければならない。
そのほか、科学を否定するような宗教的主張は慎重に取り扱うべきである。
(58) 放送局の関知しない私的な証言・勧誘は取り扱わない。
出演者が番組の中で、局の承認を得ないで私的な証言や勧誘を行ってはならない。
(59) いわゆるショッピング番組は、関係法令を順守するとともに、事実に基づく表示を平易かつ明瞭に行い、視聴者の利益を損なうものであってはならない。
〔第118条および解説文参照〕
(60) 視聴者が通常、感知し得ない方法によって、なんらかのメッセージの伝達を意図する手法(いわゆるサブリミナル的表現手法)は、公正とはいえず、放送に適さない。
視聴者が通常の視聴では感知できない映像や音声を挿入することによって、なんらかのメッセージの伝達を意図する手法(いわゆるサブリミナル的表現手法)は、アンフェアな表現手法である。このような表現手法は、潜在意識下に訴えようとする意図の有無にかかわらず、また、それによるなんらかの効果が認められると否とにかかわらず、放送には適さない。
なお、純粋に画面を強調するための「白み」などの表現手法まで規制するものではない。
(61) 細かく点滅する映像や急激に変化する映像手法などについては、視聴者の身体への影響に十分、配慮する。
アニメーション等の番組およびCMの映像手法については、下記のガイドラインに基づき、視聴者の身体への影響に十分、配慮しなければならない。
「アニメーション等の映像手法について」
日本放送協会・(社)日本民間放送連盟 1998(平成10)年4月8日
日本放送協会〔NHK〕と(社)日本民間放送連盟〔民放連〕は、アニメーション番組等の特殊な映像手法が、視聴者、それも多くの子どもたちの健康に影響を及ぼすという重い事態を経験した。
本来、子どもたちに楽しんでもらうはずの放送番組が、一部でその逆の結果を招いてしまったことを、われわれは深く憂慮する。視聴者との信頼関係を多年にわたって築き上げてきたテレビメディアとして、一日も早い信頼回復を図るため、この問題に自らが責任をもって対処し、全力で再発防止に努めなければならない。
われわれは、これを放送界全体の問題として捉え、医学者や心理学者などの専門家を加えて真摯に原因を分析・研究しながら、再発防止のための具体的なルールづくりに向けて検討を重ねてきた。
その結果、テレビは本来、明滅しているメディアであるため、視聴者、特に子どもたちへの影響を完全に取り除くことはできないものの、細かく点滅する映像や急激に変化する映像手法に関して、いくつかの点に留意することにより、こうした危険をかなりの程度、回避できることを確認した。
このため、
1.映像や光の点滅、特に「鮮やかな赤」の点滅
2.コントラストの強い画面の反転や急激な場面転換
3.規則的なパターン模様の使用
については、細心の注意を払う必要があることを喚起する。
われわれは、こうした認識に立って、各放送局が自主的に、運用上の内規等を定めることを促すとともに、その参考に供するため、放送界としての共通のガイドラインを示すこととした。
放送に携わるすべての者は、以下に提示するガイドラインが作られた意図を充分に配慮し、放送界の自主的な共通のルールとして遵守しなければならない。
このガイドラインは、今後の分析・研究の結果等により、必要に応じて改訂する。
アニメーション等の映像手法に関するガイドライン
1.映像や光の点滅は、原則として1秒間に3回を超える使用を避けるとともに、次の点に留意する。
(1) 「鮮やかな赤色」の点滅は特に慎重に扱う。
(2) 前項(1)の条件を満たした上で1秒間に3回を超える点滅が必要なときは、5回を限度とし、かつ、両面の輝度変化を20パーセント以下に抑える。加えて、連続して2秒を超える使用は行わない。
2.コントラストの強い画面の反転や、画面の輝度変化が20パーセントを超える急激な場面転換は、原則として1秒間に3回を超えて使用しない。
3.規則的なパターン模様(縞模様、渦巻き模様、同心円模様など)が、画面の大部分を占めることも避ける。
また、映像が与える影響から視聴者を守るためには“テレビの視聴方法”も重要な役割を果たしていることが指摘されている。テレビを見るときには、明るい部屋で、受像機から2メートル以上離れることなどの予防策も必要である。
NHKと民放連は今後、共同して視聴者への“テレビの見方”に関する正確な情報提供を心掛けることとする。
(62) 放送音楽の取り扱いは、別に定める「放送音楽などの取り扱い内規」による。
この取り扱い内規は、放送で用いるすべての放送音楽に適用される。
(社)日本民間放送連盟「放送音楽などの取り扱い内規」
| 1959(昭和34)年7月制定 |
1960(昭和35)年8月改訂 |
| 1963(昭和38)年3月改訂 |
1966(昭和41)年9月改訂 |
| 1967(昭和42)年5月改訂 |
1973(昭和48)年5月改訂 |
| 1976(昭和51)年7月改訂 |
1983(昭和58)年11月改訂 |
| 1985(昭和60)年3月一部字句修正 |
1990(平成2)年7月改訂 |
| 2004(平成16)年1月改訂 |
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T.放送音楽については、公序良俗に反し、または家庭、特に児童・青少年に好ましくない影響を与えるものを放送に使用することは差し控える。放送に使用することの適否を判断するにあたっては、放送基準各条のほか、次の各号による。
1.人種・民族・国民・国家について、その誇りを傷つけるもの、国際親善関係に悪い影響を及ぼすおそれのあるものは使用しない。
2.個人・団体の名誉を傷つけるものは使用しない。
3.人種・性別・職業・境遇・信条などによって取り扱いを差別するものは使用しない。
4.心身に障害のある人々の感情を傷つけるおそれのあるものは使用しない。また、身体的特徴を表現しているものについても十分注意する。
5.違法・犯罪・暴力などの反社会的な言動を肯定的に取り扱うものは使用しない。特に、麻薬や覚醒剤の使用などの犯罪行為を、魅力的に取り扱うものは使用しない。
6.性に関する表現で、直接、間接を問わず、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせるものは使用しない。
7.表現が暗示的、あるいは曖昧であっても、その意図するところが民放連放送基準に触れるものは使用しない。
8.放送音楽の使用にあたっては、児童・青少年の視聴に十分配慮する。特に暴力・性などに関する表現については、細心の注意が求められる。
U.(1) 日本民間放送連盟放送基準審議会は内部機構として、民放各社が放送音楽の取り扱いを自主的に判断するうえで参考となる意見を述べるため放送音楽事例研究懇談会を置くことができる。放送音楽事例研究懇談会は、委員(考査責任者または音楽資料責任者)若干名で構成し、アドバイザー(放送基準審議会委員)を置く。
(2) 民放各社は、歌謡曲など特定の曲を放送に使用することの適否について、放送音楽事例研究懇談会の意見を求めることができる。放送音楽事例研究懇談会の意見は民放全社に知らせて、その参考に供する。
(3) 放送音楽事例研究懇談会は、民放各社の自主的判断のため参考になると認める時は、特に意見を求められていない曲についても、その意見を民放全社に知らせることができる。
《注記》
なお、「要注意歌謡曲」の指定制度は1983(昭和58)年に廃止され、要注意の指定から5年を経過するまでの間、経過期間として指定の効力は継続したが、その期間も1987(昭和62)年に満了し、「要注意歌謡曲一覧表」は消滅した。
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